主人や主婦

 そればかりではいけません。隣組は更に、次ぎのことを約束したらいかゞでせう。 万一、老人や子供を避難させるやうな場合、主人や主婦は、それぞれ勤先や町内の勤務に服さなければなりませんから、その代りになつて、一手にそれらを預る専任のものをきめておき、決してばらばらにならぬやう、責任を以てその保護に当ることを予めきめておくのであります。 こんなことも、既に気がついて実行してゐる隣組もあると思ひますが、私はこれも上から命ぜられる前に考へておくべき大切な準備の一つだと信じます。 さて、かういふ風に、次ぎから次ぎへと準備を進めて行きますと、今までのわれわれの生活はなんといふ隙だらけな、そして、無駄の多いものだつたかといふことがわかります。 どうしてもなくてはならぬものがなく、あつてもなくてもよいものがざらにあるのであります。物質的にもさうでありますが、精神的には更にさうであります。 一家族を単位とする生活が、いはゆる家族主義の名のもとに、あまりに、家族本位になりすぎてゐたことも、かういふ時代に、反省してみなければなりません。国家を形づくる一細胞としての家と家とは、今日まで、ほとんど利害を同じくするところのない他人同士で通つてゐたのであります。さういふ風にして近所と対立してゐる家の生活といふものには、なによりも、経済と神経の浪費が数へられます。大都市に於ては殊にさうであります。 かういふ家の生活のなかゝらは、一億一心などゝいふすがたは断じて生れる筈がありません。路傍ですれ違ふ人々は、見ず知らずの人として、互に冷かな眼を向け合ひ、電車のなかで人が転んでも、手をかして起さうとするものがないのです。 人を見たら敵と思へなどゝいふ教へが、まだどこかに残つてゐるのでありませうか? これがそもそも、今日の日本を少しは暗くしてゐやしないかと思ふのであります。

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