霜柱くづるる庭のうめもどき

霜柱くづるる庭のうめもどき、根がたの土に青鵐《あおじ》来て、二羽、三羽、何かついばむ郊外の冬、その陽当りの縁近く、大皿の上、ほかほかと、甘やかに湯気を立てたる薩摩芋。親子三人、軍国の今日の糧《かて》ぞと、配りおこせし一貫匁の芋なり。

芋にして紅赤を我は好む。紅赤の蒸焼せるをほくと割れば、さらさらときめこまかなる金むくの身のいかに健《すこや》かにも頼むに足るの現実ぞや。鹿児島の蒸《ふ》かせるは、わが娘とりわけてこれを喜ぶ。鹿児島の肉は粘稠あまき乳練れるごとき味ひはこれぞ祖国の土の歌、かの夏の日の勤労の詩なりかし。

紅赤の、はた鹿児島の、其のいづれをも妻はとるなり。妻は主婦にして又人の子の母なれば、好みは言はじ、選《え》りもせじ。ひたすらに、分つ者、与ふる者の満足もて、おほらかに、ねんごろに、手馴れしさまに食《た》うぶるなり。

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