この詩にうたはれた生活

 この詩にうたはれた生活を見ますと、私がこのお話のうるほひの要素となるものを、希望、感動、新鮮味とあげてきまして、更にそれを生み出す源として智慧、ものを味ふ心、即ち芸術的精神と愛情、特に日本的義理人情をもち出したのでありましたが、この詩を通じて私の申しましたことが、ほゞ当つてゐるかと思ふのであります。 なほ、もう一つ例をあげますが、最近、或る未知の婦人から私あてに手紙がまゐりました。その手紙の内容を簡単に紹介いたしますと、その婦人は二人の子供さんをお持ちださうですが、近頃、街頭で、主婦達のかはす会話を聞いてゐると、まことに途方に暮れるやうな気持がする。「ものが無い。ものが無い」をいくらかでも聞かずに済ますわけにはいかないものか。女が二人寄つて「ものが無い、ものが無い」となげいても何の役に立つだらうか。自分は子供をもつ親として、以後、ものが無いをいふ代りに、子供達の将来のためのことを考へてやつたらどんなものでせう――。その婦人は、更に、自分で考へた文句を小さな紙片に印刷して、浴場だとか、市場とかで配りたいと申出てこられました。その文句の第一は、[#ここから2字下げ]皆様、私達お互ひ日本人は、「ものが無い、ものが無い」を挨拶代りにいふことをやめようではありませんか。さういへば不足勝ちなものが出てくるわけでもありませんから。かへつて寂しくなるだけでせうから。いないな、それどころか、皆様のまた次の代の国民たる子供さん方皆が、精神的に受ける影響はいかばかり悪いか、大きいか。それは申すまでもないと存じられますから。ぐちをいふ前に、私達はせめて、愛する子供たちのため、よりいゝお話を一つでもよけい考へようではありませんか、皆様![#ここで字下げ終わり]

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