巻煙草を分けて貰って

「一本頂きましょうか」と豊世は手を出した。「自分じゃそう吸いたいとも思いませんが、他様《ひとさま》が燻していらっしゃると、つい頂きたく成る」 お雪も夫の巻煙草を分けて貰って、左の人差指と中指との間に挾んで吸った。「あれで宅はどういうものでしょう」と豊世は叔父に、「名古屋へ参ります前なぞは、毎日寝...

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三吉は頭を垂れた

「どうしたら気に入るなんて、私にはそんなことは言えません」と三吉は頭を垂れた。「でも、ねえ、叔母さん――」と豊世はお雪に。「亭主を離れて観るより外に仕方が無いでしょう」と三吉はどうすることも出来ないような語気で言った。「そんなら、叔父さんなんか、どういう気分の女でしたら面白いと御思いなさるんで...

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二階から見える町家の屋根

「正太さんの手紙に、『私は未だ若輩の積りで、これから大に遣ろうと思ってるのに、妻《さい》は最早|老《おい》に入りつつあるか……そう思うと、何だか感傷の情に堪《た》えない』――なんて」  それを聞いて、豊世はお雪と微笑《えみ》を換《かわ》した。名古屋から送るべき筈《はず》の金も届かないことを、心細そ...

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